旧山陰道 36
石見・29温泉津宿〜小浜
29温泉津宿
温泉津港
目の前に温泉津(ゆのつ)湾が見えてきた
かつては、石見銀山(大森銀山)で採れた銀や木材、陶器・温泉津焼きの
積出港として、また北前船の寄港地として賑わった港である
この辺一帯はリアス式海岸で、天然の良港が多い
北より湯里港、日祖港、沖泊港、そして写真の温泉津港である
その中で一番大きな、入江の深い港が写真の温泉津港である
なお、中世の銀の積み出しは、隣の沖泊港が中心であったようだ
しかし、これらの港は往時の賑わいは無く
今は静かな一漁港となっている
(島根県大田市温泉津町)
ゆうゆう館
ここは江戸時代に船表番所があったところだ
入・出港の許可、水上役の徴収、城米の保管、船積みなどの職務を担っていた
番所の周りには、城米(年貢米)を納める蔵や、油屋、木津屋などの廻船問屋が建ち並んでいた
この場所が、銀山街道のスタート地点であった
今はゆうゆう館として休憩所
そして2階には温泉津の歴史を紹介する資料や
民具が展示されている
「祝、石見銀山世界遺産登録」の横断幕が未だ新しかった
(島根県大田市温泉津町)
温泉津宿入口、内藤家庄屋屋敷
ここは、山陰道29番目の宿場・温泉津の入口付近(港側)である
右手の古い建物(下写真)は、内藤家庄屋屋敷だ
元亀元年(1570年)、当家初代内藤内蔵丞が、毛利元就の命を受け
銀積出の重要拠点である温泉津港の入口に
鵜の丸城を築き、その奉行に任命された
内藤一族は、毛利水軍の御三家の一つであった
関ヶ原役の後は、温泉津に土着し
代々町年寄りや庄屋、廻船問屋、酒造業を行ってきた
この建物は、延享4年(1747年)の温泉津大火の後に
建て替えられたもので、温泉津では一番古いという
築後260年以上も経っていることになる
(島根県大田市温泉津町)
温泉津温泉街
この温泉津温泉街は
重要伝統的建造物群保存地区に選定されている
温泉津温泉は1300年前に開かれた古い温泉場であった
近世は石見銀山(大森銀山)の積出港として隆盛を極め
市場町、山陰道の宿場町としても発展してきた
その面影を今も留めているところである
(島根県大田市温泉津町)
龍御前神社
龍御前神社(たつのごぜんじんじゃ)は
温泉津港に出入りした北前船の守り神であった
背面には、龍のような岩山が絶壁となっている
(島根県大田市温泉津町)
温泉津・道標
温泉街の中程に古い道標があった
「みぎ 大もり、ひだり じき ゆのつ」と刻まれている
この温泉街の細い道は
大森銀山と温泉津を結ぶ銀山道でもあった
(島根県大田市温泉津町)
西楽寺
右側に西楽寺
温泉津温泉街の略中央にある寺で、大永元年(1521年)の開山
天正年間の大坂石山合戦(1570〜1580年)の折の
顕如上人からの書状が今でも残されている由
(島根県大田市温泉津町温泉津)
恵光寺
大永5年(1525年)開山
天正15年(あ587年)には、細川幽斎がここに宿泊して
住職の日慈聖人と百韻連歌を催した
また大森銀山の初代代官大久保長安がここで会食し
その時賜った葵の紋入りの祈祷箱が残されている由
(島根県大田市温泉津町)
温泉津元湯と薬師湯
温泉津温泉街の一番奥
この先が温泉津宿の東の入口付近であった
左手奥に温泉津温泉元湯が小さく見える
温泉津で最も古い温泉で、自然の力で今でも47〜50℃の
やや高めの温泉が地底から湧き出ている
右手の薬師湯(右手前から2軒目)は
明治5年(1872年)の浜田大地震の時に
自然湧出した新しい温泉で、共に共同湯(入浴料300円)となっている
下の写真は沢陶器店で
温泉津は宝永年間(1704〜1711年)に始まる
温泉津焼きで知られた陶器の里でもあった
今でも、国内最大級の登り窯(やきものの里)がある
(島根県大田市温泉津町)
温泉津・小浜
小浜集落
温泉津温泉街を抜け、温泉津湾に戻る
湾に面して、ミラーカーブと古い木製の常夜灯が
何んともいえない対比であった
やがて温泉津町小浜に入る
ここも古い町並みが残されているところだ
下の写真の先を左に曲がるとJR温泉津駅となる
旧山陰道は真っ直ぐの道である
(島根県大田市温泉津町小浜)
厳島神社
毛利元就が、氏神である宮島の厳島神社を分社したもの
永禄11年(1568年)の建立
船の守り神として信仰を集めていた
毎年、2/14に行われる古代から続くという
「御日待(おひまち)祭り」はなかなかユニークだ
日が暮れると子供達が町内を練り歩き、
その後拝殿に上がり、スクラムを組んで輪になり
「王子や王子、五郎の王子」と叫び
座板の上で飛び跳ねるというもの
座板が割れると豊作になると伝えられている
古来人が米作を持ち込んだ時から続いているという
(島根県大田市温泉津町小浜)
小浜町並
JR温泉津駅前通りである
温泉津温泉と書かれたゲートが目に付く
駅付近の小浜温泉と、前述の古くからの温泉津温泉を合わせて
温泉津温泉と呼んでいるそうだ
(島根県大田市温泉津町小浜)
JR温泉津駅前
JR山陰本線の温泉津駅である
この温泉津は難読駅名として知られている
「ゆのつ」とは読めなかった
文字通り、温泉のある港(津)の意であるから
これほど解りやすい地名も無いであろう
(島根県大田市温泉津町小浜)
旧街道、小浜
旧街道に復帰する
堀川の橋を渡ると、次は山陰道30番目の宿場・郷田宿への道となる
下の写真は堀川に掛かる橋より温泉津湾を臨んだものだ
(島根県大田市温泉津町小浜)
(0804/0806)